幻影

どれいへいし

2016年10月26日

彼は、大柄だ。しゃがむと半ケツになることを自覚しているだろうか。誰も指摘しないし、私も面白いから何も言わない。詰所ではすぐに冷房の設定温度を下げるので、私はその恩恵を受けている。

彼は、独り言を呟く癖がある。怒りっぽい性格だ。彼の大きな独り言は、時に周りの人間をビックリさせる。その意味では、彼もまた、無邪気なのかもしれない。

昔は敬遠していたが、いまはかなり尊敬している。私たちが気づく必要の無いと思っていたことは、私たちが気づかないと誰も気づかないのだ。彼はそれを指摘する。大事な役割を果たしていた。来月異動してしまう。大きな存在を手放すことになる。